博士号取得者インタビュー

2021(令和3)年度 博士号取得支援助成金授与

2024年9月 新潟大学博士号(工学)取得

五十嵐 浩司さん (取得時64歳)

【論文テーマ】

機械学習を活用したコンクリート橋梁の付着塩分量推定および損傷予測に関する研究

五十嵐 浩司さん
「学位取得後も、研究活動および教育活動を継続したい」と語る五十嵐さん。

機械学習活用で橋梁の維持管理技術を革新する

「いつかの夢」博士号取得に、50代後半で挑戦

 五十嵐浩司さんは、1979年に地元の新潟大学農学部農業工学科に入学。大学院修士課程に進学し、1985年に修了した。その後も研究を続けたいという思いから、東京が本社の大手道路会社の技術研究所に就職した。技術研究所では、高速道路工事の品質管理、特殊な道路舗装の開発および研究業務等に携わった。また、技術研究所の優秀な人たちに刺激され、32歳で、科学技術分野の高度な専門能力を持つ技術者を認定する技術士試験(建設部門)に合格。さらに、研究スキルを高めるために博士後期課程への進学を模索していた。しかし、当時の建設業界は非常に多忙で、進学の機会を得ることはできなかった。
 そんな中、36歳の時に家庭の事情で実家がある新潟県に戻ることになった。新潟では大手道路会社の北信越支店に勤務していたが、40歳の時に新潟が本社の建設コンサルタント(公共インフラ【道路、橋梁など】の計画・設計に関する技術的な助言や支援を行う会社)へ転職した。

 その後、50代後半になると、技術者としての視点に加え、経営の視点を養うために、経営専門職大学院でMBA(経営管理修士)を取得。優秀修了生にも選ばれた。大学院修了時の進路相談で、博士号取得を勧められ、新潟大学大学院博士後期課程に進学した。

実務経験から社会的にも意義のある研究を選択

 橋梁の老朽化に伴うひび割れ点検作業は、従来の手法では多大な労力を要するものだった。五十嵐さんは、建設コンサルタント時代、多数の職員を動員し、大量の点検データを収集する非効率的な作業に課題を感じていた。そこで博士課程では、最新の機械学習手法を活用し、技術者や解析者の経験に依存しない損傷予測手法を構築することを研究目的にした。研究テーマは、機械学習を活用し、コンクリート橋梁の付着塩分量の推定および損傷予測を行う手法の開発とした。本研究は、実務課題に対する先進的な解決策を提示し、社会課題の解決に貢献することを目的として取り組んだ。

機械学習活用だけでなく成り立ちにまで興味

 ここで言う『機械学習』とは、AIの一分野を指す。点検業務の効率化にはプログラムの活用が不可欠であるが、五十嵐さんは、単にプログラムの使い方を学ぶだけでなく、機械学習の成り立ちや基本理論の習得にも取り組んだ。さらに、データ分析において有効なアルゴリズムを見極めるため、事前学習としてインターネットや書籍を活用して調査を行った。

博士号取得後の抱負

 五十嵐さんは、博士号取得後の抱負を以下のように考えている。
 第一に、「地域と連携した研究の推進」である。
地域社会が抱える課題を解決するため、地方自治体や企業と連携し、実践的な研究を通じて地域社会への貢献を目指す。特に、橋梁などのインフラ維持管理に関する研究を進め、地域の安全と持続可能な構造物管理に寄与したい。
 第二に、「AI・データサイエンスの知識を建設分野に広めること」である。
知識と技術を建設分野に適用し、効率的な橋梁の維持修繕技術を提供する。さらに、学会発表を通じて建設分野全体へ知見を広めることを目指す。
 第三に、「自身の知識拡充の継続」である。
博士号取得はゴールではなく、知識を広げ深めるためのスタート地点である。常に学びを続け、新たな知見を取り入れながら、自己成長を促しつつ、社会に貢献すること。今後は博士号を活かし、実現できることを増やすために、これからの5~6年を、可能性を広げる重要な期間と考えている。具体的には、企業に対するDX活用の提案、教育機関での人工知能やプログラミング言語の授業・指導、起業に関する学習などに取り組んでいく。

博士号取得に挑戦する方へのアドバイス

 五十嵐さんは、これから博士号取得に挑戦する方へ、次のようにアドバイスする。
 「博士号を取得するためには、自分自身に適度なプレッシャーをかけることが必要です。また、健康管理をしっかり行うことも大切です。さらに、研究上の課題は簡単に解決しないことが多いため、一人で抱え込まず、指導教員など適切な相手に相談するのがよいでしょう。
 『自身の研究で社会課題を解決する』という強い志を持つことも重要だと感じます。
 サミュエル・ウルマンの詩『青春』は、多くの人に挑戦する気持ちを与えてくれるでしょう。」
 ※「青春とは、心の若さである。」(角川書店)

博士号取得者紹介
博士号取得支援事業トップ