生涯学習情報誌
ようこそ!和楽器の世界へ
四.琵琶 Biwa
語って演奏、ミュージカルのような魅力
正倉院にも保存されている琵琶は現在、語り物や謡曲に加え、オーケストラでも主要楽器として演奏されることがある。琵琶独特の面白さを藤高理恵子さんに伺いました。
ササン朝ペルシャの「バルバット」が起源とされている琵琶。日本へは、奈良時代に中国から伝来した。正倉院に保存されている国宝で美しい装飾の螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)は、世界唯一の古代五絃琵琶とされる。
現在は、大きく分けて5種類の琵琶がある。
1つ目は、奈良時代に中国から伝来した楽琵琶。雅楽の管弦、催馬楽に用いる。全長約100㎝、幅40㎝と後世の琵琶よりも大型で、唐代の琵琶の形をほとんど、そのまま現代に残している。声は使わず合奏の中で和音を演奏し、リズム的に支える役割を果たす。
2つめは、盲僧琵琶。楽琵琶と同時代に中国から九州に伝来し、仏教の説経節と結びつく。
3つ目は、中世に盛んになった、琵琶法師が平家物語などを語る平家琵琶。
4つ目は、室町時代末期に始まったとされる薩摩琵琶。撥を激しく打ち付ける奏法が特徴だ。現代音楽にも用いられ、武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」(1967年)は海外でも注目された。
5つ目は、明治時代に福岡県で始められた筑前琵琶。薩摩琵琶より音色は柔らかい。薩摩と筑前はサワリと呼ばれるビーンと伸びる音が特徴。
奏者に聴いたその魅力
藤高理恵子 Fujitaka Rieko
藤高理恵子:神奈川県逗子市出身。筑前琵琶を田原順子氏に師事。古典弾き語りや現代邦楽の演奏活動を行うと共に、現代語によるオリジナル作品の創作にも力を注いでいる。また芝居や無声映画の伴奏、書道・茶道・生け花など他ジャンルとのコラボレーションも行う。2008年第5回東京邦楽コンクールにて日本現代音楽協会賞受賞。2009年 第15回くまもと全国邦楽コンクールにて優秀賞受賞。
10代の時に海外で過ごして、日本人なのに日本のことを何も知らないということがコンプレックスでした。いつか日本人ならではのことを身につけたいと思っていましたが、海外の人とも交流できる和楽器演奏は良いなと感じたのです。
演劇に接した時期があり、語って演奏する琵琶に、ミュージカルのような親近感を抱いたのが選んだ理由です。28歳の時で、まさに生涯学習として琵琶を始め、のめり込んでいきました。今は、一般の方が知らない琵琶の魅力を伝えたく、プロの和楽器集団にも所属し、演奏活動をしています。
琵琶の魅力は?
琵琶は元々、平家物語や合戦物を語るための伴奏楽器で、初めて琵琶を聴く人にとっては、少し難解かもしれません。琵琶を習ってみたいと思っても、演奏と語りを両方やるのは難しいと感じて、手を出せない方もいらっしゃるようです。
しかし、独特の音色を活かした楽曲の演奏もできますし、語りも現代の言葉で語って聞かせることもできます。楽しいこともできるんだということを伝えたいと思い、まずは琵琶を触るだけの教室もやっています。「琵琶って面白い」と気がついて、次にまた聴いてくれる人、自分も弾きたいと思ってくれる人を増やしたいからです。それが今、積極的に取り組むモチベーションになっています。
楽曲演奏における琵琶の魅力はいろいろありますが、AUNの方々など他の楽器と合奏すると、新たに琵琶の可能性を感じています。ドレミの音階ではなく、撥で4弦を打ち下ろす打楽器的要素もあります。想像とは違う琵琶の魅力に触れられると思いますよ。
音を聴いてみよう!
シリーズでご紹介している和楽器の音色を聴くことができます。
第四回は「琵琶」の3種類の音色(伝統的演奏、現代的演奏、語り弾き(平家物語))をお楽しみください。
監修者:AUNプロフィール
井上公平・井上良平。1969年大阪にて5人兄弟の末の双子として生まれる。1988年、和太鼓集団・鬼太鼓座(おんでござ)に出会い、高校卒業と同時に入座。2000年に「AUN」として独立。2009年、邦楽界で活躍する若手を集めて「AUN Jクラシック・オーケストラ」を結成。公演回数は国内外で1400回以上。子どもたちに日本文化の魅力を伝えるため、全国の小学校を訪問し、和楽器演奏と桜を植える活動もしている。
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http://www.aunj.jp